過去10年以上、日本では金利が上げられませんでした。
当記事では、なぜ日本の金利は上がらなかったのか、いつになれば金利を上げることができるのかを解説します。
なお、2023年現在では、金利が上昇し始めていますが、当記事の3.で説明しているような前向きな理由での上昇ではなく、問題は依然として残っている状態です。
近年、金利が上がっている理由については、4.にて解説します。
なぜ金利を下げたのか
一般的に、経済が加熱している時(過剰なインフレとなっている時)は、インフレを抑えるために、各国の中央銀行は、金利を上げ、経済を冷やそうとします。
金利を上げると、企業のお金の借り入れや投資が減り、物の値段や賃金も下がって、インフレのペースが落ち着くと期待されます。
これが現在、アメリカや欧州の先進国で行われている政策です。
反対に、経済が冷えている時は、中央銀行は金利を下げ、加熱しようとします。
日本は、バブル崩壊後、経済が低迷していました。
日銀は、経済を活性化するため、1999年に、いわゆるゼロ金利政策(政策金利を限りなくゼロにすること)を実施しました。
金利を下げることで、企業が銀行からお金を借りやすくし、雇用の増加や賃金上昇など、景気回復につなげようとしたのです。
さらに、日銀は、2013年に「量的・質的金融緩和」、2016年には「量的・質的金融緩和」に加えて「マイナス金利政策」を導入し、長年のデフレからの脱却を目指しました。
なぜ金利を上げられないのか
日銀は、消費者物価の前年比上昇率(インフレ率)の目標値を2%と設定し、日本経済を刺激しようとしましたが、この10年間、目標としていたほどには景気回復と物価上昇が進みませんでした。
うまくいかなかった原因については、日本の少子高齢化、労働人口の減少、グローバル人材不足、出る杭は打つ文化、既得権益により守られた岩盤規制等、様々な点が言われており、一言で述べるのは難しいです。
では、なぜ金利を上げられないのでしょうか。
企業にお金を貸す金融機関は、日銀が決める金利を基準に、金利を決めています。
日銀が金利を上げると、銀行の金利も高くなります。ここで、中小企業の社長の立場になって考えてみてください。
企業は銀行からお金を借りて商売をしているので、金利が上がると、お金が借りられなかったり、借りたお金の返済ができなくなります。
経済がうまくいっていない状態で金利を上げると、中小企業がバタバタと倒産し、大変なことになるのです。
いつになったら金利を上げられるのか
金利を上げられるのは、中小企業に金利上昇分の支払い能力ができてから(=十分な利益が得られるようになってから)です。
しかし、現在の日本は、中小企業が儲かっている兆しがないため、金利を上げられる状況にありません。
日本の労働人口が減ってきているなど、日本経済の潜在的な力は落ちてきており、今後も厳しい状況になると私は考えています。
日本の超低金利政策は、異常な状態といえます。
このまま低金利で進むと、日本の資産が増えないことを意味し、好ましくありません。
また、低金利を続けると、さらに景気が悪くなった時に政府や日銀が出せる景気刺激策が限られてきます。
まずは、金利を上げられる状況になるまで日本経済を回復することが求められています。
最近の金利上昇について
2022年になって、日銀がコントロールする金利の水準は変わっていませんが、世界情勢に引っ張られる形で日本の金利が上昇しました。
世界情勢に引っ張られるというのは、グローバルのインフレの影響を円安による原材料の高騰等の形で日本も受けたということです。
これは日銀が意図する、経済の回復とともに物価の上昇が見られるという状況ではありません。
今回のようなインフレに耐えるには、人々の給料も上昇する必要があります。
良いニュースとしては一部の大企業での賃上げが見られていますが、大部分の人が働いている中小企業に波及するかが今後の注目点になります。
しかし3.で説明した通り、中小企業で働く人々の給料が上がるには、彼らが儲かる必要があり、その点は引き続き大きなハードルとなるでしょう。
コメント