高橋杉雄『現代戦略論』まとめ

読書

印象に残った言葉

戦略とは「優先順位の芸術」である。

大国間競争の時代が到来

・ポスト冷戦期の相対的に安定した国際秩序は終焉し、大国間競争の時代が到来した。

・現在の大国間競争は、単純にパワーバランスをめぐる競争だけでなく、デジタル・トランスフォーメーション(DX)社会をどのようなかたちにしていくか(民主的価値に基づいてDXを追求するのか、国民監視のメカニズムとして利用するなど、権威主義体制でDXを組み込むのか)という、異なる価値観の競争にもなっている。

中国の動き

・南シナ海の島などをめぐる中国とフィリピン、ベトナム、インドネシアなどの問題は、中国以外の大国は直接の当事者ではない。そのため、アメリカ、日本にとっては、東シナ海よりも南シナ海の現状を維持するほうが難しい。南シナ海問題の当事国が中国による現状変更を受け入れてしまうと、米中の勢力バランスの境界線が大きく変わり得る。

・仮に台湾海峡をめぐって戦端が開かれるようなことになれば、中国にとっても米国にとっても「負けられない戦争」となり、場合によっては核兵器の使用さえ考慮されるものとなる。現在の東アジアは世界で最も危険な地域になっていると言っても過言ではない。

・中国は、戦域レベルでは日米同盟に勝る軍事力を構築しているため、米国が世界中から増援を送り込んでこない限り、軍事バランスにおいて日本は劣勢である。

日本の立ち位置

・米国と同盟関係にあり、米国の対中戦略の変化にも関わっている日本は、大国間競争におけるプレイヤーとなっており、傍観者的な立ち位置にはなり得ない。

・中国の軍事力に比べて日本は明らかな劣勢に立たされており、中国は、米国に比べても7割から8割程度の戦力を保持している。日本自身が努力して軍事バランスを改善していかなければ、地政戦略的な現状維持を達成するのは難しいと言わざるを得ず、防衛力の強化が不可欠である(防衛費も増額せざるを得ない)。

今後の日本の防衛戦略

・中国と有事が発生した場合、日本は海によって中国と隔たれているという利点があるため、状況を膠着状態に持ち込み、短期戦での決着を阻止できれば、米軍の来援によって状況を好転させられることが期待できる。

・日本の目的が現状維持である以上、万一有事になっても、日米は中国本土に対する外征作戦を行なって中国を打ち負かす必要はなく、中国による海洋侵攻を阻止することが重要となる。

・今後優先すべきなのは、宇宙・サイバー・電磁波能力の強化、対艦ミサイル攻撃能力の強化、効果的な情報発信のための広報戦略の見直しなどである。

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文字が大きく、わかりやすい文章なので、防衛に関する知識がほとんどなかった自分でもさくさくと読めました。日本の防衛費増額、今後の防衛戦略については、本にもっと詳しく、わかりやすく書かれています。

現代戦略論 [ 高橋 杉雄 ]
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